美味しい煙の話

               



基本編と無添加について   

    

 燻製は、元来保存が目的で作られていたため、塩辛く固い、においの強いものでした。
これは、いまでも燻製風珍味などの商品に残されており好みの分かれるところです。また
大量に生産しているところでは原料を燻液というものに漬込んで燻製の風味を出している
ものがありますが、いくつかの燻製品を食べても同じような味になるのは化学調味料と、
この燻液を使っているからです。

 現在は保存というよりも(もちろん燻煙による防腐効果もありますが)芳醇な香りと深い味
わいを作り出すことに重点がおかれるようになっており、生ハムやスモークサーモンでも塩
分を抑えて仕上げているようです。

そのため素材そのものの味が仕上がりの出来具合を決めるので質の良い素材を使い、味
付けの塩や砂糖・スパイスなどの材料にも気を配らなければなりません。そして最後に煙で
す。燻煙は香りをつけるだけではなく味までも変えてしまいます。魚の生臭さを消したり、
燻煙後熟成させることで素材そのものが持っている隠れた味わいを引き出すことが出来る
不思議な力を持っているのです。この煙のもとは、サクラやナラ・ヒッコリーなどの広葉樹を
使い、ときにはローレル(月桂樹の葉)などをブレンドして各店のオリジナリ性を出しています。
ちなみに当店は地場産のヤマザクラとナラを使っています。



無添加について(2004 4/10)

厳密に言うと、保存を目的にした保存料・発色剤、うま味調味料などと名前を変えた化学調味料などは一切使
用しません。

その使い過ぎと、相互作用の弊害は人体への影響が問題視されて久しいのですが、未だにそれらを使わないと作れないと思っている製造者も
多いのです。私もそういうところで修業したならそれが当たり前だと思ったかもしれませんが、ほとんどの知識を本から得て試行錯誤し何よりも味
に重点を置いた製品作りだったのが幸を成し、結果として色も保存性も得ることが出来ました。

特に肉の色は、発色剤を加えないと絶対に出せないと思っている食肉製品製造者はうちの商品に疑いを持っています。肉の発色には亜硝酸塩
(商品名は知りません)が使われますが実は粗塩や野菜などに微量ですが含まれています。素材の味を引き出すための漬け込み液(ソミュール
液)にはこの粗塩と香味野菜(セロリやニンニクなど)がふんだんに使われているのです。


発色剤を使わないと言うことは、

それでは出来上がりが同じかというとやはり違いは出てきます。ビーフなど肉質によって赤みが濃く出る所と黒っぽくなる所があり、またベーコン
をスライスしてみると肉の色にムラがあるのが解ります。更にパックから取り出し空気に触れているとどんどん肉色がくすんできます。これは発色
剤をしっかり使っている他の食肉製品では見られない大きな違いです。

あるスーパー(全国にある)からの問い合わせで、ベーコンをスライスし、グラムを統一できれば取り扱いたいというお話がありましたが、退色が
早くなるのでお断りしました。そのスーパーは添加物を使わない商品が多いのですが、そういうところでも発色剤を使わない商品は少ないので、
単純にスライスベーコンも可能だと思ったのでしょうね。その違いを理解していただいている店舗さんが今うちのベーコンを取り扱っていただいて
います。


ついでに、燻製品の色についてですが、皆さんが目にする燻製品の色のイメージとして、琥珀色・飴色などを思い浮かべると思います。実は映像
用か、昔の保存を目的にした作り方か、はたまた燻液につけ込んだ物なのです。普通に煙をかけた場合しっかり色が付いた物とは、材料によって
は酸味が出たり、ピリピリするほどの濃さになります。まあこういうのを好まれる方もいらっしゃいますが、趣味で作られる方はあまり本の色に惑わ
されないようにチップの量を少な目にして燻煙をかけることをおすすめします。


燻液についてもちょっと触れておきます。私は使ったことがないのですが、簡単に言えば木酢液に近い物でその中に保存料や化学調味料を入れ、
原料を漬けて乾燥して出来上がりで主に珍味などで販売されているカキ・ムール貝・卵などがあるようです。燻液も使い方によってはメリットもある
のですが、多くのメーカーではたっぷりの化学調味料を使うためカキもムール貝もみんな同じ味になってしまい、一度自分で作るとその出来上がり
の違いに驚き、燻製を趣味に加える方が多くなるのも理解できます。


化学調味料について(5/2)

最近の風評に「旨味調味料」などと名前を変えていますが、元は同じグルタミン酸ナトリウムすなわち化学調味料のことです。
昆布などに含まれる旨味成分ですから、日本人には馴染みのある物でちょっと加わると美味しくなります。本来はだしを上手にとっていれば出てく
る旨味なのですが、時間がないときには便利なので瞬く間に家庭へ普及し、いろいろな料理に使われるようになりました。


問題はその量です。補うための分量からいつの間にか主役になっているのです。出来た料理の上からかけたり、漬け物にかけたりとその濃い味で
なくては満足できない人が結構います。試食販売をしているとお客様の反応を見ていてそう感じるときがあるのです。

これは家庭の中だけではありません。市販されている食品にも多量に使われている物があり、ニーズに合わせた製品作りというだけではないよう
です。

日本人は本来素材の味を大事にした食文化を持っています。主食であるお米の味を知っているから銘柄にこだわり品種改良もされやっぱり白いご
飯を食べたいと思います。海に囲まれた日本は何十何百の魚介類を昔から刺身で食べてきました。それぞれ素材の味も知りそしてその素材の味
を引き出す、または生かした料理であったため、素材の善し悪しがとても大事にされていました。

ところが大量に安く生産するところは、今の鶏卵や鶏肉のように味がないかまたは臭みのある物を作り出してその味を化学調味料などで麻痺させ
ています。

人によっては、化学調味料(だけではないのです)が多量に使われているものを食べると舌がしびれるとか、下痢をする、後味が悪いなどの反応が
あります。発色剤の項でも触れましたが、この化学調味料を使いすぎるとカキでもムール貝でも同じ味のスモークになってしまいます。


これは、原料がどれだけ粗悪な物を使っているのかさえも分からなくなり、食品としての安全性を個々が判断できなくなる危険性があります。つまり
どれだけ質が悪くとも化学調味料(他にもいろいろな添加物が入っています)を使えばそこそこ食べられるものが作られ、舌が麻痺した人にはそれが
判断出来なくなると言う怖い現象になるのです。


家族で海へ行ったときそこで焼きそばを買い食べたのですが、何か変な味で子供達も食べなかったのに、隣の若い女の子二人が平気で食べてい
てみんなで驚きました。

作る側に問題があるのは当然ですが、自分の身を守るためにも匂いや味に敏感であって欲しいと思います。それがひいては良い原料の生産につな
がると思うのです。



保存料について(5/9)

そもそも燻製自体保存が目的に作られてきた食品であるのにわざわざ保存料を添加することが変な話です。

とは言え冷蔵庫等が無かった時代なら、乾燥と燻煙を長い時間かけ保存性を高めて、硬い燻製をお湯などで戻して食していたのですが、
今それまでにする必要が無く風味付けとしての燻製品に変わっており、ほとんどの商品が冷蔵保存になっているようです。

しかし短い時間でも燻煙をかけることで、原料の表面に煙の膜が出来雑菌の進入を防ぐ効果があるのです。にもかかわらず保存料を使用している
のはなぜでしょうか。不思議ですね。


ここで雑菌の繁殖を防ぐ方法についての企業秘密的なところをご紹介します。

まず
@原料は鮮度の良い物を使う。(当たり前のことです。雑菌が繁殖した物はどうしようもありません。)
A原料にはすでに雑菌が付着しているということを認識し水で洗う。(これは洗い流すということとpHを変えるという目的があります。)
B出来るだけ早く漬け込みしてしまう。(雑菌は低温でもゆっくり繁殖します。)
C短い時間でも燻煙をかける。(煙をかけることは表面を乾燥しながら煙の膜でコーティングするわけですから、燻液では出来ない保存性が得られ
 ます。)

D加工後は直ぐパッキングする。(やはり雑菌が付着する前にパックして空気を抜き冷蔵します。)

以上です。
これだけだとどこが企業秘密なんだと言われそうですが、本当にこれだけなんです。あえて言えばとにかく時間です。

通常ハムやベーコンなどをまじめに作っているところでも7〜10日かけて作りますが、うちは2日間で仕上げ、短いものでは1日で加工してしまい、そ
の後熟成させます。この場合の熟成とは原料のタンパク質と煙の成分の化学反応という意味です。


もちろん一日一品目でスモーカーの中でいろいろな原料が同時に燻煙されることはありません。


それから一度に加工する量も重要で、何もしない状態、例えばスモーカーから出してパックするまでの時間にも菌の付着繁殖があり得ることなので(
たとえ冷蔵庫の中でも)一気にパックまでの加工を終わらせることの出来る量にし、携わる人も少ないにこしたことはありません。

さてこれらのことが大量生産の現場で出来るでしょうか。

さらに付け加えると、手洗いが絶対条件です。どこに触れれば菌が付くか、菌が見えればどうってことはありません。(実際は見えないんですけど)


無添加は旨くない?(6/4)

さて皆さんがスーパーや健康食品店などで買ったことのある無添加食品が美味しくなかったことはありませんか。健康のことを考えて少し高いけど無
添加の食品を買って食べてみたら美味しくなかった、こんなものかなあと思い、また次からはいつもの食品を購入してしまうなんてことがあったんじゃ
ないでしょうか。

 これはメーカーが無添加だから味はしょうがないという作り方と、消費者が濃い味または科学調味料の味になれてしまい原料の味では満足しない
舌になっていることがあげられると思います。


しょせん食べ物です、一日3回は食べるわけですからやっぱり旨いにこしたことはないわけで、まずいなあと思って食べたら、いくら体に良い物でも栄
養は吸収されないのです。

食べ物が限られるアレルギーの人はそれでも我慢して食べるしかありません。そうなると食べることは楽しみではなく体を維持する薬を取り込む時間
になってしまいます。


私もそうですが、食事の時間短くありませんか。美味しい物は手間をかけなければ出来ません。手間をかけた物を買うか、手間をかけて作るしかあり
ません。そして食べ頃が大事です。温かい物は温かいうちに、冷たい物はよく冷えているうちに食べること。作る時間も食べる時間も短くなった今、家
族で一緒に食べる時間を何か理由を付けて食べることに夢中になっても良いのでは。


 そこで無添加は旨くないか?ですが、そんなことはありません。化学調味料などを使わず美味しくするために、良い原料を使い、良い材料で味付けし
て、良い手間をかければ美味しくなります。そして食べ頃をはずさないこと。されど食べ物ですから。



安全安心な食べ物とは、 (6/27)

皆さんがスーパーなどで食品を買うとき気にかけるのは、賞味期限・添加物・原産地等でしょうか。

近年大手食品メーカーが、原料を偽証したり、回収した食品を再度販売したりと消費者の信用を無くすような行為が相次いで発覚しました。
それと同じ頃アジアの国から輸入された野菜に高濃度の薬剤が検出されるなど、国産物が安全のように取られかねない雰囲気がありました。本当に
国産の物が安全でしょうか。


何年か前日本の近海で捕れる魚から高濃度の重金属が検出されたと聞いたことがあります。その後環境が改善されたでしょうか。海に注ぐ川をきれい
にし源流となる山に広葉樹を植樹しているところは、日本でも数少ないのではないでしょうか。


前述の野菜は別として、まじめに作られた物が輸入されている物もたくさんあるのです。国産と偽らなければ、非難されることなく食卓に堂々と乗ってい
た食材が、一メーカーが国産と偽ったためにその原産国の食材にまるで問題のある物のように思われて、まじめに作った人たちに不快感を与えたことで
しょう。


食糧自給の少ない日本でも、無農薬有機栽培が広がり始め(もちろん偽物も)、消費者(一部)もそれが絶対に正しいとばかりに過敏なまでに反応し、
日常生活では抗菌使用が飛ぶように売れたその結果は、、、、。

無農薬野菜を生で食べ続けた人のおなかの中からはたくさんの回虫が出てきて、また菌を排除した生活を送っていた人は、体の抵抗力が衰えるなど
極端な例ではありますが現実に起こっています。

決して殺虫剤などをたっぷりかけた虫食いの跡もない野菜が良いというのではありません。ただ大手のコマーシャルベースや偏った消費者団体などに
惑わされないで頂きたいと思うのです。


お客様から、豚肉はどこどこの豚肉が良いという情報を頂くことがあります。調べてみると劇薬の硫酸銅を使っていたり、または手に入らないことが多く、
うちではイワチクという県内の屠場からの物を利用することで価格も抑え安定して製造しています。せめて加工するときに添加物を使用しないで作ること
で、味に関しては勝っても劣ることはないと自負しています。


さてではどうしたら納得のいく物を手に入れられるのでしょうか。これは我々生産者・製造者と皆さんとの信頼関係しかありません。私は一人でやってい
ますから、お客様からのご質問にはすべてお答えできます。そこが小さいお店の強みです。作っている人が分かり質問にすぐ答えられるかどうかはお客
様に安心していただく最善の方法です。今必要とされているのは、その土地にある小さくても個性的なお店ではないかと思います。

ただ残念なことに小さいところでも化学調味料や発色剤を加えて無添加として販売しているところもあります。そのことがすぐ健康に影響するとかではな
いのですが、この業界全体の信用問題になってしまいます。


そこで、食べていただく皆さんはご自分の舌を信じ、気に入った物を納得してそれでも疑問があれば遠慮なく聞いていただくことで自分にあったお店、信
用できるお店かどうかを判断していただきたいと思います。




 最後に  (9/3)

 昨今アレルギー体質の人が増えているようですが、かくゆう私も鼻炎・花粉症でずっと苦しんできました。
学生の時農場の実習で乾草の取り込みから突然、くしゃみ・鼻水・涙が止まらなくなりました。まだそのころ花粉症の認識はなく、その後スギ花粉の被
害がニュースで流れたのは10年以上も経っていたのではないでしょうか。ただ私の場合スギでは大丈夫だった(今はスギもあり)のですがイネ科の草
などに反応し、草刈りなどしようものならくしゃみの連続で目は痒くなり、草の汁が肌につくと発疹が出来かきむしっていました。終われば必ずシャワーを
浴び全部着替えないと次の仕事が出来ないのです。このような状態の時は鼻が敏感になっておりスモークの煙でも痒くなってしまいます。薬を飲んでも
副作用で眠くなってしまい、これまた仕事になりません。ここ何年か体質が変わってきたのかスギ花粉にも反応するようになったのですが、草ではあまり
ひどくならず通院せずに済んでいます。でも鼻だけは年間通してぐずぐず状態が続いています。

 
こんな体質を受けたようで子供達はアトピーに苦しみました。皮膚の弱いところに発疹が出来夜になるとかきむしって、病院を訪ね歩いたものです。成長
にしたがい幾分軽くなってきてはいますが、4番目はプールに入るとひどくなり夏を残念がっていました。

子供達にアトピーの症状が現れたのは、まだ乳児の時なので間違いなく親の体質が遺伝したと考えます。

そこで私が成長したときの環境を考えてみますと、昭和30年代の高度成長期、戦後わずか10年の時です。
タマゴは貴重で卵焼きはごちそうでした。バナナもそうです。小遣いをもらって買ったジュースはビニールの容器に入ったとんでもない色のもので、菓子類
もしかりです。

食品添加物に限らず、農薬・消毒薬・殺虫剤などその安全性が後で覆るような物もありました。水田に使われた農薬が川に流れ川の生き物がいなくなり
ました。

そんな時代に育った私たちの影響を子供達が受けたのだと思います。そして環境は今も変わっていません。こんな田舎でも花粉症で苦しむ人が確実に
増えています。

そこでせめて私が作る食べ物は無添加にしようと考えることはごく自然でした。
この地球上どこにいても環境汚染は多かれ少なかれ受けるでしょう。それならせめて少しくらいのことではへこたれない強い身体、抵抗力を付けて対抗
しませんか。

お酒も程々に、タバコは吸わない方がいいですね。塩辛い物や辛過ぎも良くないです。
何事も程々がいいんじゃないでしょうか。いえけっして今の商品を妥協しようというわけではありません。
無添加の方が美味しいんですから。
                                                    
         


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